イデア

和食の長所、和食に伝わる心、生命の尊重などについて

ピーター・シンガーの言葉から動物愛護について考える

ピーター・シンガーの生涯と思想

ピーター・シンガーは、1946年生まれの、オーストラリアの哲学者・倫理学。「種差別(ヒト以外の生物に対する差別)」の廃止と規制を訴えて、世界各地における、動物の福祉や権利を訴える運動を後押ししてきた。

かれの著書は、動物の権利や菜食主義の思想的根拠として、世界各地の人々の間で広く活用されている。

 

ザ・ニューヨーカー誌によって「もっとも影響力のある現代の哲学者」と呼ばれ、また、タイム誌によって「世界で最も影響力のある100人」の一人に選ばれている。

 

ピーター・シンガーの言葉

「平等の原理は人間のみに限られる理由はなく、動物にも広げられるべきである。」

 

「人間と動物は種が違うから別扱いしてよいというのは、人種差別、女性差別ならぬ、『種差別』であり正当化できるものではない。」

 

「現在の社会において人間が動物たちに行っていること(畜産や動物実験など)は、人間の利益を優先して動物に配慮せず、動物を利用して多大な苦痛を与えて殺害しているので非道徳的である。」

 

「動物への配慮は、人間の弱者への配慮と同じように、正義と平等の原理が要求する問題である。」

      『動物の解放』より

 

ピーター・シンガーの思想と現代生活

ピーター・シンガーも説いているように、他の生きものの命に配慮しつつ生きることは、私たち人間にとって大切な課題である。しかし、一方で、私たち人間は、元来雑食性の動物であり、日々の食生活のなかで、植物性の食品とともに動物性食品の摂取が不可欠である。自らの命・健康を維持するためには、他の生きものを自らの栄養源として摂取する必要がある。

 

それゆえ、いかにして、他の生きものの命に配慮しつつ自らの生命・健康を維持していくかが、私たち人間にとっては、宿命的に背負わされている重い課題である。

 

こうしたなかで、考えられることは、ひと口に「生きもの」・「動物性食材」といっても、そこには、感覚(痛みなどの感受性)や感情(恐れ・悲しみなどの感受性)の有無・発達程度に応じてさまざまな種類があるということである

 

たとえば、乳製品と卵は「感覚や感情を持たないもの」であり、また、鳥類や魚介類は、哺乳類ほど高度には、感覚や感情が発達していないものである。

 

乳製品と卵は、「感覚(痛みなどの感受性)を持たないもの」・「身体の外にあるもの」であるとして、動物性食材を忌避する人たちの多くが、これを食することを容認している。

 

また、魚介類や鳥類も、哺乳類ほど高度には感覚や感情が発達していないものであるとして、動物性食材を忌避する人たちの多くが、これを食することを容認している。

 

こうした人たちに共通しているのはせめて人間に近い感覚や感情を持ち、人間に近い苦痛や恐れ・悲しみを感じている高等動物=哺乳類(四つ足の動物など)を食することだけは避けようとしていることである。

 

牛や豚などの哺乳類は、人間に近い豊かな感情を持ち、甘えてきたり、なでてやると喜んだりもする。が、こんにちでは、単なる「肉」として過酷に扱われ、そのことに文句も言えないまま命を終える。 

 

牛は、ほんらい15年ほどの寿命があるが、こんにちでは、普通23年で屠殺に送られる。ここで順番を待つ牛は、周囲の音や臭いから死を悟り、恐怖から全身をはげしく震わせ、目には涙をためているという。

 

豚の場合は、普通6ヶ月という非常に短い命を終える。最近では、わずか二人の人間の管理の下で、年間数千頭もの豚肉を生産するオートメーション化された工場すら増えつつある。こうした工場では、豚のいのちは、与えられる数キロの餌を1キロの豚肉に変えるための単なる「機械」のように扱われてしまう。

 

最近では、米・野菜・魚介類・鶏肉中心の食生活が、成人病を予防する健康食としても、国内外の多くの人たちの関心を集めている。